* 2次のSVF *

*Fc=1KHzの SVF

 上図の場合 Q={1+(Rf/10K)}*(1/3)
 Rf=10K時 Q=0.666
 Rf=11K時 Q=0.7
 Rf=20K時 Q=1

Fcは1次のfilterと同様の積分器の CとRのインピーダンスが同じになる周波数なので
Fc=1/(2πC*R)



* 周波数特性(Q=0.666時)

BPFのカーブは1次なので積分器の 1/f特性とその逆特性を漸近線とするカーブ。 LPFとHPFの遮断領域は 積分器 2段の 1/f^2特性とその逆特性を漸近線とするカーブ。


積分器+負帰還の1次のSVF filter回路に積分器をもう一段追加した形になっており入力信号に対して最終出力(LPF出力)は加算減算器の同じ極性入力、1段目の積分器出力(BPF出力)は1次のfilterと同様に逆の入力に帰還されています。

1個積分器を追加することによってOP AMPの加減算器の出力はHPFになりますが1段目の積分器の出力はLPFでなくBPFになります。 1次の SVFとの相違は Rf=11Kの時(Q=0.7)は積分器が1個増えてこれを入力に対して正帰還しているだけの違いのようにも見えますが積分器が2個あるのと不思議なBPFのFBがあるので特性は大きく変化しています。

積分器が2段重ねということで、1次filterに比べて遮断帯域のスロープが2次のスロープになるわけなので、結局これは2次のfilterとなります。

つまりHPF出力であってもこれは2次のHPF出力で、2次のHPFが積分器に入力されればFc以降の特性は1次の積分特性に近づくけれどもFc以前は2次のHPFの遮断特性が1次になるだけなので通過帯域とはならず1次のHPFの遮断特性なので全体では1次のBPF特性になるわけです。

BPF出力が後段の積分器に入ることによってFc以降の特性は積分器2段分の特性に近づき、Fc以前は1次のHPFの遮断特性がとれて通過帯域になるので結果2次のLPF特性になるわけです。


この2次filterは2段目の積分器が無ければ初めの1次LPFと同じ形です。 ということは2段目の積分器があることによって

1: 1次 STVの1次HPF出力の位置では  ---> 2次HPF
2: 1次 STVの1次LPF出力の位置では ---> 1次BPF
3: 2次SVFのBPF出力 --> 積分器  --> 2次LPF出力

になるということになります。 積分器の挙動から大枠な動作はわかりますが、ここでどうしてLP,BPという2箇所から初段の加減算器に対して帰還をかけるのかLPFの方は1次のSVFを踏襲しているようにも見えますがBPFの方はいかに?。


* まずはLPF出力の帰還

基本的に1次LPFの場合と同じく積分器の出力と印加信号をMIXすることには変わりはないわけです。 ということはGAIN最大時には負帰還が正常にかかりLPF出力が限りなく印加信号に近く、かつ同位相になるのではないかと予想されるわけです。

上記の回路は積分器+位相反転回路が2段になっていることからこの2段の積分器を通過すると位相が180度常に変化することになります。(-(-90)-(-90))


ここで以下のような積分器2段を反転増幅器1個に置き換えた回路で考えてみます。
(積分器2個で-180度、インバータ2個で 360度=0 なので結局インバータ1個)

Rinの抵抗値を可変して反転増幅器のGAINを変化させた時のHP, LP 出力の変化を以下に示します。

* 積分器2段が反転増幅器だった場合

増幅器のGAIN HP出力 LP出力
0 -1 0
0.125 -1.14 0.143
0.25 -1.33 0.333
0.5 -2 1
1 -∞
2 1 -2
4 0.333 -1.5
5 0.25 -1.25
6 0.2 -1.2
7 0.166 -1.16
8 0.143 -1.143
9 0.125 -1.125
10 0.111 -1.111
100 0.0101 -1.0101
1000 0.001 -1.001

印加信号(SIG)の振幅が1の場合、上記の結果を得ます。  

* HPout= -(1+LPout)
* LPout= -(HPout*GAIN)


よって、

* HPout= 1/(GAIN-1)
* LPout= -(GAIN/(GAIN-1))

となります。

1次のSVFの出力の関係
HPout=-{1/(GAIN+1)}
LPout=HPout*-GAIN =GAIN/(GAIN+1)

と比べてみると-1と +1の違いがあることがわかります。



* GAINが1より大きい区間(LPF通過帯域)。(横軸 Rinの抵抗値)


GAINが∞に近づくにしたがって LP出力は -1に近づきます。  GAINが低下するにしたがってLP出力は増大していきます。

またHP出力は GAINが∞に近づくにしたがって0に近づきます。  GAINが低下するにしたがってHP出力は増大していきます。

両者ともGAIN=1(すなわちFc)に近づくにしたがって出力は指数的に増大しています。




* GAINが1より小さい区間(LPF遮断帯域)。(横軸 Rinの抵抗値)


GAIN=1を境にしてLP出力の極性が反転、GAIN=0.5でLP出力=1となります。

GAINが0に近づくにしたがって LP出力は 0に近づきます。 GAINが低下するにしたがってLP出力は低下していきます。

GAIN=1を境にしてHPF出力も極性が反転、 またHP出力は (積分器の)GAINが0に近づくにしたがって-1に近づきます。 GAINが低下するにしたがってHP出力は低下していきます。

両者ともGAIN=1を境にして出力は指数的に低下しています。


結局、 GAIN=1以下で LP出力の帰還は正帰還になり、1より大きいと負帰還になるようです。 GAIN=1以下では正帰還であってもGAINが1以下なので発散はしませんが、GAIN=1では正帰還ループで発散するということです。


* 振幅軸:リニア 周波数軸LOG表示。

上図はRfを100KにしたQの高い状態での2次のSVF周波数特性ですが、上記の積分器*2のかわりに OP AMP 1個で置き換えた時の特性と基本同じということがわかります。 BPFの帰還ルートをはずしてしまえばFc位置で発振ですので上記のピークはさらに大きく最大になるということです。


上記回路を眺めてみると反転増幅器が2段構成になっているわけなのでAMPのGAINに関わらず正帰還なような気がしますが.... 実際はGAIN=1以下で正帰還なのですね..... つまり、帰還ループ内ではAMPの裸の増幅度は保たれつつ、つじつまが合うように 帰還ループ内のAMPに入力される信号電圧が決まる。

積分器の GAIN=1になる周波数は Fc。 LPF outからの帰還のみではここで発散する。 回路をよく見れば SVFのHPFとLPFのFcは同じになるわけで両者の交差する領域にBPFが構成されているのでFc位置で正帰還していれば条件が整えば発振というのは当然です。


上記の反転増幅器の部分を元の積分器*2に戻せばBPFからの帰還なしのSVFになるわけですが、この反転増幅器と積分器*2の違いは印加信号周波数によってGAINが変化すること以外は原理的には同じということになります。 この際、このfilterの帰還ループ内で BPFが構成されていることからこの発散はcutoff周波数と同じ周波数で発振するということを意味します。

つまり 正帰還ループが成り立っていて、ループゲインが1あってかっ、周波数弁別子としてのBPFがループ内に存在しているので発振するわけです。


* 上記の後段の OP AMPのGAIN=1での発散




* 位相関係 *


* BPF出力の帰還が無い場合(発振)の位相関係

FcつまりGAIN=1の時に LP出力は位相は0度なのでループゲイン=1でかつ正帰還ループが成り立っている。 Fc以前が完全に負帰還でFc以降が完全に正帰還。



* BPF出力を帰還した時(Q=0.67)の位相関係

FcつまりGAIN=1の時にLP出力は位相は0度にならず、0度になるのはGAINがうんとさがってからなのでループゲイン=1で正帰還ループという条件は成り立たない。



* BPF帰還を少なくしていくとLPF outは位相0度の100%正帰還?に近づく

1次のLPFと違ってQを可変することで周波数特性だけでなく位相特性もダイナミックに変化する。 LPFの位相がFcで0にならない範囲では減衰があり発振できない?。


BPF出力を加減算器に対して負帰還させることは発振具合というかQをコントロールすることになるわけで、cutoff周波数でLPF出力が正帰還になることをさけるようにする操作といえるわけです。

上の2っのグラフからわかるように、BPF出力を帰還した場合もしない場合もcutoff周波数(積分器のGAINが1の時 )においてはBPF出力の位相は0度つまり、印加信号と同じになります。 つまりBPF出力を負帰還することは同位相の印加信号を弱める働きになるわけで、正帰還ループによる信号の増大をさけるとともに、正帰還ループそのもの存在を阻止するように位相をコントロールしていることにもなるのでしょう。



* cutoff周波数(fc)におけるBPF 出力の負帰還 *

fcのポイントにおいては、BPF出力の帰還信号の加減算器の+端子(そのもの)に加わる電圧(抵抗分圧後)が加算器を通過した時の出力はQがどのような値にあっても 入力信号と同じレベルとなります。

この為、このポイントにおいては入力信号とBPF出力信号が相殺され、結果LPF入力信号が位相反転したものが HPF出力になります。 この部分がこの回路のポイントです。

たとえば、上記SVF回路の加算器の+端子(非反転入力)に対するGAINは3なので

* Q =0.67の時: Rf=10K +端子に加わる電圧 :0.666*0.5=0.333 OP OUT=0.333*3=0.999
* Q =1.00の時: Rf=20K +端子に加わる電圧 :1.00*0.333=0.333 OP OUT=0.333*3=0.999
* Q =0.37の時: RF=1K +端子に加わる電圧 :0.37*0.9=0.333 OP OUT =0.333*3=0.999

といった具合になります。


定常状態では入力信号とBPF信号の帰還量*加減算器の非反転入力ゲインが一致するので両者は相殺されますが、初期状態やQを変化させた時の過渡状態においては上記BPF出力要素が入力信号と同じになる為には時間を要します。


* LPF出力レベルの増大が止まるまでの様子(SIGとBPF OUTは実際は逆相)

すなわちBPF出力の帰還量が少ないほど入力信号レベルと同じになって相殺するのに時間がかかります。 そのため相殺完了までの時間の間はLPF出力の加減算器への帰還信号は正帰還(*1)となるため、どんどん振幅が増大することになります。

相殺されて0になった信号以外の信号の挙動が一瞬、変な感じにも思えますが Fcの周波数においては位相は違っても HP,BP,LPの振幅 GAINは同じ値というのがみそでFcの周波数ではそれぞれの出力は位相が違うだけで同じ振幅の波形がループしているだけの状態ということになります。


上記の両信号が相殺された時点で LPF出力の増加も止まり、このレベルが Qの値となるわけです。 ですからBPF出力の帰還がないとcutoff周波数では止め処もなく出力振幅が増大するということになるわけで、発振するわけです。 この発振においては歯止めがないのでなにかしらの振幅リミッタを配置して安定したSIN波発振を保持するような対策が必要です。 このこともあって SVF typeのVCFにおいては発振できない仕様のものが多いです。


fcでは積分器のゲイン=1ですので、HP.BP, LP出力レベルは全て同じになりますので結局、fcのポイントではBPF出力の賞味の帰還量 * 加減算器のGAIN = 1 となるようにHPF,BPF,LPF出力が決定されるということです。

DCではLPF出力が入力信号と完全に位相反転してかつ、積分器のGAIN=∞であり BPF出力が非常に小さいのでこの項は無視できて、加減算器の結果つまりHPF出力は入力信号とLPFの和となって -1に近づく。

周波数∞では積分器のGAINが非常に小さいのでBPF,LPF出力は非常に小さいので 入力信号が加減算器を出た値そのものがHPF出力となる。

どちらにせよ帰還のかかっている回路ということで、印加信号周波数に対して 加減算器のGAIN,各積分器のGAINが維持されるように各波形の位相、振幅が 決定され、系が安定化するバランスメカニズムが働くということでしょうか。


* notch filterによる発散(発振)の抑制


* BPFに対応したnotch filter特性のイメージ

入力信号と逆相でBPFをMIXしているので notch filter特性が現れます。 帰還量が多いほどBPF特性はゆるやかで同様にnotch特性はなだらかですが Fcから広範囲に影響があります。 帰還量が少ないとBPF 特性はするどくなり notch特性も鋭いですが影響は Fc近くのみに限定されます。 また谷の深さは小さくなります。



* BPF帰還無しの状態と帰還した場合の notch filterのイメージ

* 赤: NOTCH特性
* 白: BPF負帰還無し時のLPF特性
* 緑: 上記NOTCH特性時のBPF特性

BPFの負帰還無し時のLPF特性に対してQの小さいBPFの負帰還でできたnotch filterはLPFの Fc付近のピークを相殺する形の特性に見えます。 よってBPFを負帰還する量がおおきければLPFの Fc付近の特性はなだらかになる。 逆にQの大きいBPFを負帰還すると前図のように谷は急になるが Fc位置での谷の深さが小さくなり、Fcより離れた大域でのBPF負帰還の影響は小さくなるのでFcより少し離れた帯域ではBPF負帰還無しの特性が顕著化し、 Fc位置では負帰還の効果が弱まるのでピークが大きくなる。

上記のように2次SVFは notch filter特性が表には出ていないが内包しています。 このnotch filterを表に出した回路構成がBiquad 型の filterとなります。 OP AMPがもう1個増えて4個構成になりますが、原理を理解するにはよりわかりやすくなっています。


*1:はじめの方の説明のように LPF出力はFcでは正帰還になっている。

またFcより低い周波数に対してはLPF出力は入力に対して負帰還になっていてF=0で180度位相差がありますので積分器のGAINが大きくなるほど印加信号振幅が抑えられ2次のHPF特性を生成それが次の 積分器でBPFになるのでFcより低い帯域では1次のHPF特性となりそれがもう一段積分器を通過することでLPFの通過帯域特性になるのでこの流れは1次SVFと同じ流れです。

BPFの負帰還特性はFcで最大で周波数が前後すればよわまる。 それに対してBPFで負帰還をかけない元の特性もFcで発散、前後の周波数では大きさが低下する特性なのでBPFの負帰還はFcでの発振を止めることと同時に前後の周波数帯の特性の増加を防止している。

このFc前後の周波数帯におけるGAINのふくらみはFcでのGAINが0.7で固定されている1次LPFではおきないQを可変できる2次filterならではの状況です。

BPFの帰還量を少なくすればQが大きくなるのでFcだけでなく近傍の周波数帯域も虚勢以前の特性が顕著化してLPF, HPFのFc付近の通過帯域はBPFの肩特性に対応して盛り上がってくる。

1次filterに較べれば Qを可変することができ場合によっては Fcで発振可能な構造になっているためやはり複雑な動作ではありますがLPF、HPF出力だけでなくBPF出力も表面に出ているのでその分わかり易いfilterです。


audio信号の与え方は、始めの図のように逆相入力(OPAMPのー端子から)で与える方法の他に 同相入力(OPAMPの+端子から)で与える方があります。

同相入力時は Qを変えると(*1) LP/HPの通過帯域gainが変化しますがBPFのgainは変化しません。逆相入力時は Qを変化させても LP/HPの通過帯域gainは変化ませんがBPFのgainは変化します。 この 初段のOPAMPの(+)端子に信号を入れるタイプの方がbPFによる notch特性の発生が(+)端子に直接現れるので Fc位置での正帰還による発振阻止のようすが明確にわかります。(下図)

*1:
上図のRを可変することでQを変える。この場合BPFのGAINは変化しないがR2を変えた場合はBPFのgainも変化する。



* R2=10K Q小。

緑* MIX電流
白: 負帰還 BPF電流
水: 印加信号電流


* R2=10K Q大。



*余談

* CR Filterのしくみ

負帰還を受けた微分電流と積分反応によって各C, Rに生じる電流、電圧の周波数特性の関係を以下に示します。


* 1次CR LP filter(図3)

共有電流は 1次HPF特性。 これは微分特性に負帰還をかけて通過帯域をフラットにしたもの。 それが capaciorの積分作用でoutputは1次LPF特性(電圧)になる。


* 2次 Passive LPF(図1)

1段目のCR回路には1次HPF特性の共有電流が流れる。 Capacitor C1にはそれを積分した1次LPF特性(電圧)が発生。

後段のCR回路には BPF特性の共有電流が流れる。 これは CR回路の電流特性は1次HPF特性だが 後段のCR回路のINPUT電圧は LPF特性であるためHPFの通過帯域が-6dB/octのスロープで低下するためBPF特性になる。

BPF電流を積分して C2には2次のLPF特性(電圧)が発生。

ここで各特性の関係は
1次LPF = BP + 2次LPF
1次HPF + BP + 2次LPF = FLAT(印加信号)


* 2次 S&K LPF(図2)

出力からC1に向って正帰還がかかっているので上記の2次Passive LPFとは中間経路の特性が 異なる。

2段目のCR filterに関しては特性形態は近いが、1段目が大幅に異なる。
R1を流れる電流は 1次HPF特性であるがC1を流れる電流は2次のHPF特性になる。 これは出力からC1の電位をかさあげしているため流入量が下がりよりSlopeがきつい2次HPF特性になる。

このため C1の電圧は2次HPFを積分してBPF特性になる。 一方次段のCR回路は上記のPasive2次 LPFと同系の特性であり BPF特性電流が流れそれを積分してC2は2次LPF特性の電圧となる。

ということはR1とC1の接点の電位は1次LPF特性ということになる。 すなわち(2)の経路において BPF + 2次LPF = 1次LPFという関係になりこれは経路(1)のBPF + 2次LPFと同じ関係が成立。

BPF + 2次LPF = 1次LPF
1次HPF + BP + 2次LPF = FLAT(印加信号)



* Sallen & Key 2次HPF

S&K LPFのCとRの位置を差し替えると図4の下のように2次HPFが構成できます。 これが一般的なS&K HPFですが、図4の上のように入力とGNDを差し替えて(C2のGNDをVinにしてR1のVInをGNDにさしかえる)も2次HPfが構成できます。

これは図4のようにS&K 2次LPFの入力とGNDをさしかえても各素子に対する電流、電圧の周波数特性は同じで異なるのは逆相になるだけです。 このためC2に加わる電圧が2次LPF特性なのはかわらないのでC2のGND側から信号を入れれば Vin - 2LPF = 2HPFとなる道理でこれは Vin信号に対して逆相で2次LPF信号を加算してHPFを発生させる手法と同じであると言うことです。

KORGの700等のトラベラーVCFのHPF セクションやMS20のHPFセクションがこの方法を取っています。 これはVCHPFとして図4の下のタイプでは都合が悪いためだと想像されます、が何よVinとGND位置をさしかえるだけでHPFとLPFが全く同じ回路が使えるメリットからくるものでもあるのでしょう。



* 2次CR filter 詳細

2次のLPF/HPFは必ずBPF要素が含まれている。

上記のように2次のSVFはBPFを積分することによって2次のLPF特性が生成されます。 2次のSVFは機能が明確に分離されておりかつ各filter出力は電圧出力なのでとてもわかり易い構造になっていますがその他の2次filterではBPF要素が隠されて存在しているので一瞬見ただけではそのBPFがわからない構造になっていますが必ず存在します。 このBPF要素があるからこそ2次のLPF/HPFにおいては 正帰還をかけられる構造であれば1次のfilterとは異なりQを可変することが可能となるのです。

* 1次CRpassiveLPF+Buffer+1次CRpassiveLPF


X軸:LOG Y軸リニア
赤:2LPF
白:1次passive HPF/LPF
桃:BPF

1段目は1次LPFとまったく同じ、微分電流は1次HPF特性でそれが積分されるのでCには1次LPFの電圧が現れ、抵抗には1次HPFの電圧特性が表れます。 

次にbuffer後の回路について考えます。 前段と同様の1次LPF構成になっています。電流特性はというと前段が全帯域に対して均一な振幅の印加電圧に対してHPFの電流特性だったのに対してこの段に対しては、LPF特性の電圧が印加されているので電流特性はLPF出力がHPFの電流特性に作用するので結果BPFの特性で電流が流れます。

SVFではBPF特性が電圧で現れるのでわかり易かったのですが通常のfilterではBPF特性は電流の形で現れこの電流をcapacitorの積分特性で充電(放電)した電圧が最終的な 2次LPF特性となります。

BPFの電流特性を積分した結果はcutoff以前の通過帯域が平坦になりcutoff以降の遮断帯域はBPの肩特性が積分されるので2次のLPF特性となります。つまりBPFのピークを中心にそれより低い周波数の帯域がうえに引っ張られ、それより高い周波数の帯域が下に引っ張られたカーブになるわけです。

また2個目の抵抗の電圧降下は電流特性と同じなのでBPF特性となります。つまり2次のfilterでは予期せずというか、内部にBPF特性を内包しているわけです。 このBPFのピークは1次LPFのFcと同じ周波数になります。

このことはなにを意味するかと言えば、このBPFの特性をなんらかの形でコントロールできればQを可変できるということです。

上記BPFの振幅レベルですがf0でのレベル、Qは0.49になります。これは1次LPFの Qが0.7でそのあと1次HPF特性を通るので0.7*0.7=0.49になるわけです。最終結果の2次LPFのQもこの結果をうけてQ=0.49になります。このため FcはF0に対して低い周波数に移動してしまいます。

このように一般のCR filterにおいては電流と同時に電圧の変化を考慮しないと動作がわかりませんのでそれに比べるとSVFは電圧動作だけですむので理解がたやすいと言えるのでしょう。

と言うかfilterとしての基本的な動作はSVFでも上記のfilterでも同じだということが電流の変化を考慮するとわかると言うことです。上記のfilterを単に 1次passive LPFが2段重ねという電圧だけで考えると本質を見失います。


1次passive LPFの2段重ね


X軸:LOG Y軸リニア
* 電流特性
赤:分流前のHPF成分
橙:分流したHPF成分
緑:BPF成分
白:単体の1次HPF特性

1次LPFの出力に対して次の1次LPFが負荷としてぶらさ:\ がっているので1段目の抵抗を通った電流が1段目のcapacitorと次段の1次LPFに分流してしまいます。またcapacitorのインピーダンスが周波数により変化することもあって複雑な特性になります。

1段目の抵抗に流れる電流はHPFの特性になりますが、1次LPF単体時のHPF特性と比べて遮断特性は減衰量が少なくなり、通過帯域も落ちこんでいます。 これは上記のように流すべき電流が増えてしまうのでそれを補うために電流が補給されるためです。

低周波域の減衰量が少ないのはその帯域では capacitorを2っドライブするような状態になるためです。高周波帯域では抵抗に対してcapacitorのインピーダンスの方が十分低くなるので次段の1次LPFに対して電流があまり流出しなくなる為(多くは1段目のcapacitorに分流)低周波域ほど次段負荷の影響はありません。

抵抗から分流した電流のひとつは1段目のcapacitorに流れ込みます。この際この電流は大元のHPF電流が次段に分流したのこりとなるため、1次LPF時のHPF性電流と比べてF0付近が目減りした肩特性がなで肩のものとなり、それを積分した1段目のcapacitor電圧はLPFですがQは0.5に低下します。


X軸:LOG Y軸リニア
* 電圧特性
赤:2次LPF
緑:1HPF
橙:1LPF
桃:BPF
白:単体の1次passive HPF/LPF

次段の1次LPFに分流する電流は前段の出力電圧がLPF特性なのでそれにHPF特性がかぶさるためBPFになります。この電流がBPF特性となるため上記のHPF電流はF0付近が落ち込むわけです。

この時のBPFのQは0.5*0.7=0.35です。そのBPF電流が積分されるので最終出力のcapacitor電圧は 2次のLPF特性となります。このLPFのQも0.35となります。Fcは上記のbufferd 2次LPFよりもさらに低い方に移動します。


Sallen & Key 2次LPF

正帰還型のfilterの原理の説明としてはBPF出力を加えることによりcutoff付近のなで肩を補正することです。 すなわち上記のLPF2段 filterでは正帰還ができる構造になっていなかったのでQをコントロールすることはできないわけでした。

上記の2次LPFの例でもわかるように最終的にはBPF特性の電流が積分されることにより2次のLPF電圧がcapacitorに発生します。またそのときのLPFのQはBPFのQと同じになるので、BPFのQをあげてやるような仕組み、つまりはその前段の1次LPFのQをあげてやるし仕組みを作れば結果2次LPFの肩特性、Qが改善されます。

正帰還型のfilterの図において、1段目のLPFのcapacitorの下の端子に出力をFBしているのでこの出力信号によってcapacitorの電位つまり1段目のLPFの出力振幅がかさあげされているであろうことは感覚的にわかると思います。 この際ブーストする帯域はf0付近だけでよいためブーストされる信号はBPFの特性になるようにしなければなりません。

2次LPF出力からこのFBがかかっている経路をのぞくとちょうど1段目のLPF回路が逆さから見えるのでHPFになるのでBPFとして経路が機能しそうです。すなわち正帰還される要素は出力電圧に対して1次HPF + 1次LPFの1次BPF filter成分が正帰還されるということで、最終出力はこのBPF経路と入力サイドからの2次passive LPF出力の加算結果です。

GAIN=1のAMP出力をFBした場合結果としては 1次CR passive LPF+Buffer+1次CR passive LPFで構成されたfilterと同じ特性になります。すなわちOP AMPの前の回路構成が1次LPF 2段重ねの2次LPFにあるにもかかわらずFBによって肩特性が改善されるのです。

さらに肩特性を改善して1次LPFのようなFc=F0で、Q=0.7つまりバターワース特性にしたい場合はAMPのGAINを1.6程度にするか、GAIN=1で 2っのcapacitorの値を2:1の関係(つまりオクターブ関係)にすることで実現できます。



X軸:LOG Y軸リニア
* 電流特性
橙:1HPF
白:BPFF
桃:2HPF

上記回路の電流電圧特性を順を追ってみてみましょう。まず1段目の抵抗に流れる電流ですがこれは1次のHPFになるのは想像できますが、問題はこの時のQがどうなっているかということです。正帰還をかけてはいますが、CRの回路は上の1次LPF 2段重ねの2次LPFと同じ物が入っています。

2段重ねの回路の時は少しいびつな1次HPFの形になりましたが、この正帰還をかけたfilterでは普通のQ=0.7のHPFになっています。つまりBPF成分が追加されたことにより特性が矯正されたことになります。

次にこのHPF電流は2段重ねのfilterの時と同様ふたてに分流します。まずは1段目のcapacitorに分流する電流の特性をみてみましょう。結果としてこの電流は2次のHPFの特性になりますが1次HPF+buffer+1次HPFの特性つまりQ=0.5の特性になります。これも2段重ねのfilterの時に比べて矯正されています。

最後に次段のLPFに分流していく電流のカーブはBPFとなるのはpassive2段重ねのfilterの時と同じですがこれもQ=0.5に改善されているのがわかります。


X軸:LOG Y軸リニア
* 電圧特性
赤:2LPF
白:1次passive HPF/LPF
桃:BPF

次に電圧について見てみましょう。1段目の抵抗の電圧降下は上記の結果をうけてQ=0.7の1次HPF特性となり、1段目のcapacitorと GND間の電圧はQ=0.7の1次LPFの特性となります。ここでこのcapacitor--GND間電圧というのはcapacitorの片側がAMPの出力からFBされている形になっているのでcapacitorの両端子電圧+最終出力(2次LPF)ということになります。

capacitorの両端子電圧は (1次LPFー2次LPF) になるので1次のBPF特性となります。一方2個目の抵抗の電圧降下は上記の電流特性を受けてQ=0.5のBPF特性となるのですが、よく見るとこの抵抗の電圧降下と1個目のcapacitorの両端子電圧はそれぞれの両端子が1次LPF出力、2次LPF出力という同じものにはさまれているので同じBPF電圧特性になるのです。

最終出力はQ=0.5のBPF特性の電流が積分されるのでQ=0.5の2次LPF特性の電圧となります。結局、出力をFBしたことによって1個目の抵抗を流れる電流の次段への流出が改善されることつまりはこのFB電圧が流出分をまかなってくれるので特性としては1次LPFの後にbufferが付いた効果と等価になるということです。 

最終的な特性自体は 1次CR passive LPF+Buffer+1次CR passive LPFと変わらないのですがこちらの場合は最終出力もbufferされて出てくることが有利となります。


<2021/01/16 rev0.4>
<2018/01/14 rev0.3>